オーガスチンのまなざし 神のおとずれ 2020.6月号より

神様の業
新型コロナウイルスの感染が止まりません。たくさんの悲しい出来事が毎日のように報道されます。神様は今、私たちに何を語りたいとお考えなのでしょうか。

不幸なことが起こるたびに私はヨハネ伝の九章に帰って考えます。そこでは、生まれつき目の見えない人のことが、イエス様と弟子たちの間で話題になります。そしてイエス様は、「本人が罪を犯したからでも、両親が罪を犯したからでもない。神の業がこの人に現れるためである(三節)」と説明されます。一見不幸に思えることは、神様の罰ではなく、「神の業」が現れるためだというのです。この後、物語を読み進めていきますと、盲人はイエス様の指示に従って見えるようになります。私は、これまで神様の業というのは目が見えるようになること、と考えていました。

ところが、今年の大斎節にヨハネ伝を読んでいまして、六章にパンの奇跡があります。奇跡の後、イエス様は群衆に対して「神がお遣わしになった者を信じること、それが神の業である(二十九節)」と答えられます。目が開かれました。今年の大斎節に与えられた一番大きな恵みでした(一度ヨハネ伝の六章と九章をゆっくり読んでみてください)。神様の業とは、イエス様を神様から遣わされた救い主として信じることだというのです。

そういう目で、もう一度九章の物語を読んでみると、最後にこの人はイエス様と再会して、「主よ、信じます(三十八節)」と信仰告白をします。ここに神様の業が現れています。

何故、コロナの様なひどい事が起こるのでしょうか。神様からの説明はないと思います。しかし、神様が私たちに求めておられる「神の業」は明らかで、イエス様を信じることなのです。

様々な恐怖が支配する時にも「恐れることはない。わたしは世の終わりまで、いつもあなた方と共にいる」とイエス様は私たちに語りかけ、支えてくださいます。

冷静になって、今何をしなければならないかを考えたいと思います。

(神戸教区主教)