2021年9月1日 神のおとずれ 「善きサマリア人募金報告」
約半年に渡る募金の結果、七月末の時点で、一八〇万円を超える募金を寄せていただきました。心から感謝いたします。募金については教区報に掲載しただけでしたが、神戸教区内に留まらず日本聖公会の教会・教区・諸団体の方々や、新聞記事によって事故のことを知られた地域の方や、マイラさんと同様の介護士候補生が勤務する施設などからも寄付が寄せられました。
「経緯」
マイラさんは事故により当初昏睡状態で、ご家族の到着を待って生命維持装置を外すことをご家族と相談することが話題になるほど重篤な状態でした。事故後半月で自発呼吸を取り戻すことはできましたが、生存確率については救急救命医からは予断を許さない状況であるという説明も受けました。
コロナ禍により、ご家族の入国も二ヶ月かかり、救急救命室からの転院が決まりました。病院側も年末年始の緊急事態に備えるため、ベッドを空ける必要もあり転院は休みに入る直前の十二月二十八日というあわただしいものでした。転院先の病院は、長期療養は可能ですが、その代わり救命処置やリハビリ・積極的医療は行わないという条件での転院受け入れでした。ご家族としても不安はあるものの、通常の病棟であれば三ケ月ごとに転院を繰り返し、入院時には次の病院の目途が立っていなければ受ける病院は少ないという日本の医療制度の現状に、了承せざるを得ない状況でした。
「希望」
入院治療を継続するにも一つの病院三ヶ月単位ということでしたが、事故による意識障害の治療に限っては最長三年にわたって治療が可能な病院が全国に数カ所あり、その一つが、転院するにも約一時間程度の距離にある岡山にありました。治療後の帰郷を沖縄や関東に向けて飛行機で行った実績もあり、基本的な院内での生活は車椅子使用ということもあり、帰国準備には最適です。
「課題」
転院の許可も出て後は転院を待つだけと思いましたが、最後に大きなハードルがあり、主治医の先生も転院は不可能かもしれないとの事でした。
転院の条件は、マイラさんが現在処方されている鎮痛薬のモルヒネを、他の鎮痛剤に変更することでした。当初現在の病院でもモルヒネを取り扱っていなかったので、救急病院でも転院にあたり変更を試みられたのですが、発熱等の症状が出たため使用が継続されたそうです。
現在の病院には脳神経の専門医がおらず、減薬・変更には長期の経過観察も必要なため、変更は不可能ということでした。また、大学病院のような専門医のいる病院は急性期の患者を専門としており、受け入れは難しいので、小規模のペインクリニックを転院先とするにしても、やはり三ヶ月後の再転院先を事前に準備できなくては受け入れて貰えないかもしれないとの主治医のご説明でした。しかし、最終的にはマイラさんの帰国を目標としますので、来日が叶ったマイラさんのお母さんとも相談し、帰国を可能にするためにも、モルヒネの減量・置き換えは試みていく予定です。
継続的なサポートが必要になりますので、寄せられた募金は長期にわたってのご家族の支援のために、用いさせていただきます。本当にありがとうございました。
(マイラ・エステバン姉 支援室室長・司祭 上原信幸)