オーガスチンのまなざし 神のおとずれ2021年11月号より
「ヨシュア前田次郎司祭逝去」
九月十一日(土)前田次郎先生の奥様千代子さんが、逝去されました。家族葬で十一日通夜の祈り、十二日葬送式を垂水伝道所で行いました。
それから今度は、二十日(月)前田次郎先生が肺炎のため、八十九歳で逝去されました。ご家族に心からお悔やみ申し上げます。今回もご家族からコロナ禍ですから家族葬でお願いします、と依頼されていましたので、聖ミカエル教会で二十一日通夜の祈り、二十二日葬送式と各々の司式、説教をいたしました。ご夫妻の天国における魂の平安をお祈りいたします。
前田先生と初めて親しくお会いしたのは、大学四年生の時で約四十年前のことです。教区の青年交流会が復活して、様々な活動をしていましたが、黙想会をしたい、という私の願いが叶って、当時垂水の山にあった聖使修士会の修道院で行われ、前田先生を講師としてお招きしました。いろいろなお話をお聞きしたと思いますが、一つ覚えていますのは、マタイ伝十四章にある「湖の上を歩く」というお話です。湖の上で逆風のため漕ぎ悩んでいる弟子たちの所へ水の上を歩いてイエス様が来られます。弟子たちは幽霊だと思って恐れますが、イエス様だとわかるとペトロは自分も水の上を歩いてそちらに行かせてください、とお願いします。イエス様が「来なさい」と言われ、ペトロは水の上を歩いてイエス様の方へ進みます。しかし、強い風に気がついて怖くなり、沈みかけ、「主よ、助けてください」と叫ぶとイエス様は手を 伸ばし助けた、というお話で す。そこから前田先生がお話 くださったのは、信仰生活とはイエス様を見つめて進むこと、しかし、生活していれば思わぬ出来事(風)が起こってくる。その時にペトロのように「主よ、助けてください」と叫ぶことが大切。必ずイエス様は助けて下さいますと教えてくださいました。
なるほどなあ、聖書とは、こういう風に読むものなのか、と心から納得しました。今でも忘れられない青春のよい思い出です。次の年、私は聖公会神学院に入学していきます。前田次郎先生、本当にありがとうございました。
(神戸教区主教)