オーガスチンのまなざし 神のおとずれ2023年12月号より
「飼い葉桶のイエス様」
私の実家は、福山市の田舎で、家に牛小屋があります。祖父が馬喰(ばくろう)という仕事で、牛の売買の仲介や家でも牛を飼っていました。クリスマスが近づくといろんな場所に飼い葉桶に寝かされたイエス様の人形がきれいに飾られます。それらを見るたびに「違うんだよなあ」という思いが心に浮かんできます。みなさんは本当の飼い葉桶をご存じでしょうか。
家にあったのは、直径50センチくらいの円筒形、高さは30センチくらいだったでしょうか、木製のものでした。その中にお米を収穫した後のわらを刻んで入れ、ぬかや塩を入れて、最後に水を少し入れて、かき回します。飼い葉の準備が出来る頃には、牛は口からよだれを流しながら待っています。そして、飼い葉が与えられますとおいしそうに食べ、最後には、桶の底にたまった塩水に混ざった「ぬか」を長い舌をなめ回しながら食べます。動物の唾液がこびりついているのが飼い葉桶です。イエス様の時代、飼い葉が、どんなものだったか分かりませんが、動物がエサを食べる桶であれば、そんなに違わないと思います。
他人に対する嫉妬や怒り、不安や心配など私たちの心にないでしょうか。まるで動物の唾液で汚れた飼い葉桶のようです。
イエス様はお生まれになって布にくるまれ、飼い葉を敷いた桶に寝かされます。そして、私たちに語ってくださいます。「あなたのことが大切だ。そのことを伝えに来たんですよ。」と。よいクリスマスを。
(神戸教区主教)